ユーロ/円相場は、95~97円水準のレンジをやや上放れしつつある。8月2日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、危機収束に向けてECBが国債購入を実施する意向が示されていたが、その実現可能性が増しているとの見方から、ユーロショートに対する買い戻し圧力が強くなっている。ただ、本格的にユーロ買いを進めるような動きもみられない。
ECBドラギ総裁は、債券市場が「深刻な機能不全に陥っている」ことを指摘した上で、欧州救済基金とともに債券市場に介入する意向を示していた。具体的な介入スキームについては定時されなかったが、「目標を達成するのに十分な規模の買い切りの公開市場操作を実施する可能性」を示していた。資産購入を不胎化しない量的緩和政策にも含みを持たせていた。マーケットでは、ドイツ連邦銀行がこうした政策対応に慎重姿勢をみせていたため、その実行可能性が疑問視されていた。しかし、6日にメルケル独首相がECBの国債購入プログラムを支持する意向を初めて表明したことで、再びECBの政策対応に対する期待感が強くなっている。こうした政策対応期待が相場形成の主導権を握れば、ユーロ買い戻しの動きが継続し易い。
もっとも、ECBが南欧の低格付け債券を購入すれば、今度はECBの資産劣化がユーロの上値を圧迫することになるだろう。財政難という基本問題の解決が先送りされる中、ユーロの持続的な上昇を想定するのは難しい。各国の利害対立、政策決定への民主的プロセスが必要な時間等を考慮すれば、ECBの政策対応は危機が顕在化したことを確認した上での後手に回らざるを得ない。政策対応期待によるユーロ買い戻しの動きは、あくまでも維持的なユーロ高圧力との評価で十分だろう。
今後1週間の予想レンジは、96.00~98.50円。